8月26日 Berryz工房サマーコンサートツアー2006 『夏夏! 〜あなたを好きになる三原則〜』千秋楽 大阪厚生年金会館

ベリーズはかつてあった拙さゆえの魅力を脱ぎ捨て、見事にその次の段階へと進化を果たしました。夏の日差しの様な眩しさ溢れるコンサートでした。


▼自分が初めてベリーズに興味を持ったのは、Wスタンバイの予習で「あなたなし」をCDで聴いた時です。こんな凄い曲を、拙いスキルしか持たないちっちゃい娘が歌う。そのギャップがフックとなって、「あ、この娘たち面白いかも」と初めて思えたものです。でも、実際ライブで見てみるとそういうアングルは希薄で、「可愛い娘が歌って踊る」という、ただそれだけのシンプルな事実がとてつもなく魅力的だったりして。そのふたつが自分の中でのベリーズの面白さとしてありました。ただ、後者の魅力はまだまだ距離を突破する力が弱く、ベリコンの面白さはどれだけ前で見られるかに左右される、それが春ツアーまでの印象。
今ツアーは「夏」をテーマにした事もあって、等身大の明るい曲が多いセットリスト。昼公演は2階席だったのでどうかなと思っていたのですが、いやいや、夜見ないで帰っちゃってもいいんじゃないのってくらい楽しめました。大満足。


▼かつてあった「拙さ故のアングル」や、「素材をそのまま供されるシンプルな魅力」という段階からもう一歩進んで、「普通に良く出来たアイドル」を真っ向勝負で演じられる段階に彼女たちは到達しました。そこに良曲が供給され、しっかりした演出が支える。だから後ろの席までちゃんと魅力が届くわけです。
アングルが際だっていた「あなたなし」が今回カットされたのは必然でしたね。「スペジェネ」をカットする絶好のチャンスだったんじゃないの、とすら思いました。


▼春のにょきにょきチャンピオンでは、嗣永が突出しているという印象を受けました。体とスキルが成長した結果、本人の頭の中のイメージを実現出来るようになったという感じで。今回は全員に同じ現象が起こったように感じました。勿論到達レベルにばらつきはありますが、誰かが突出しているという印象は無し。それぞれが「自分の型」を掴かみ、以前の「ちっちゃい娘がドタバタ頑張ってるなー」という状態から、プロフェッショナルの階段を一段登った、と言えるでしょうか。全員一丸となったエネルギーを浴びる心地良さといったら!


▼ただ、そういった変化を捉えて、ベリーズから大切ななにかが無くなってしまった、と嘆く人もいるでしょう。そんな人が℃-uteに流れる気持ちも分からなくはありません。ですが、そこまでベリーズに必死ではない自分としては、これだけ楽しいものを見せてもらえれば文句のあろうはずも無く。横綱相撲で真っ向から寄り切られた感じです。「黄金期」という言葉さえ浮かびました。


▼今回のツアーは演劇的なつくりになっています。メンバーが一泊二日の夏合宿に来ている設定で、計3回の寸劇が入る構成。テンポが悪くなるという声もあったようですし、シチュエーションを限定し過ぎる事でその世界に入っていけなくなる人もいたかも知れません。けれど、自分はこの試みは凄く良かったと思います。堅牢な土台を用意する事で、その上でメンバーが伸び伸びと振る舞う事が出来る。結果、彼女たちの溌剌とした魅力を堪能できました。
手の込んだ構成もそうですが、今回は随所にスタッフの手腕が光りましたね。象徴的だったのが「蝉」の後の寸劇で、からかわれたキャプが熊井に殴りかかる小芝居のくだり。長い手で頭を押さえられて拳が届かなくて、「今日はこれくらいで勘弁しといたるわ」と強がってみせる、池野めだかのアレです。昼の部ではオチの台詞が「今日はこれくらいで良しとするか!」だったのですが、夜の部では台詞をオリジナルと同じにした挙げ句、全員一斉にずっこけるという(笑)。過去の例を見ても、優秀なスタッフほどフットワークが軽いんですよね。
確認していませんが、スタッフが交代していないのなら、これまでのベリコンや最近の娘。コン、ハイスコアを手掛けた ONE POINT でしょうか。ここはMOMOXに次いで、いつも良い仕事してくれています(ハイスコアでのカバーを除く)。


▼以前、「ベリーズはローティーンという対世間的足枷が外れてスキルも身に付いた、デビュー5年後が勝負」と言った人がいました。アイドルには鮮度というやっかいな問題があるだけに、自分はこの説に懐疑的でした。ですがこれだけの輝きを見せられて、ちょっとだけ、ちょっとだけだけど、その説を信じてもいいかなという気になれました。


▼以下、印象に残った点をグダグダと。

・嗣永は完璧。言うことなし。参りました。
・ルックスで抜けていたのが夏焼。フランス映画に出てきそうな雰囲気で。
茉麻。「ファイポー」で鞄からマフラータオルを取り出して振り回すTシャツ姿の茉麻は、どう見ても洗濯物を叩いて伸ばす主婦二児の母でした。
茉麻のおでこに極太マジックで落書きしたい男達の会、会員募集中。
・自分の茉麻に対する感情は歪みまくってると思う。
・この日の茉麻のダンスはキビキビとしてダイナミックで、これは他のメンバーにも言える事なんだけど、頑張ってレッスンしてるんだなあ、と改めて感じました。
・熊井のダンスってやっぱりぎこちないんだけど、時々ピタッとはまる瞬間があって、そしたらスタイルが良いだけにすごく格好いい。


・客入りは昼夜とも所々歯抜けがある程度で、ほぼ満席。一般人らしき親子連れは昼公演で2〜3組確認。
・贈花は「ハロプロやねん!」から。
・千秋楽ってことで、感極まるメンバーとお疲れ様ムードのヲタに置いてかれるんじゃないかと危惧してたんですが、杞憂でしたね。最初からテンション全開の盛り上がりに乗っかって楽しめました。
・以下、セットリストに沿っての感想。
・「ファイティングポーズはだてじゃない」。「きっかけー きっかけーなら」のところでジャンプする振りが好きなんだけど、今回は肩から鞄を提げてたせいでぎこちなかったのが残念。
・初めて「ギャグ100回」を良い曲だなって思えた。どこが良いかはうまく言えないんだけど、この流れだととても楽しい。
・「友情純情〜」。拳を突き上げて客席を煽る熊井が男らしくて格好いい。このあたりまで、「つんく♂先生、あと100年くらい大丈夫なんじゃないの?」と思ってしまうくらい、楽曲・構成とも完璧だった。
・嗣永、茉麻、キャプ、菅谷によるしりとり。昼の部は、嗣永「食い倒れ」茉麻「レッスンで」キャプ「でっかい靴」菅谷「嗣永桃子」。夜の部は、嗣永「今日」茉麻「新幹線で」キャプ「カフェラテをこぼした」菅谷「嗣永桃子さん」。最早しりとりですらないという。嗣永が「それって今朝の私の事じゃん!」とキレてオチ。
・「三人祭」(夏焼・徳永・熊井)。地鳴りの様なベースが狂気を増幅する!ピンクのズラじゃなかったのが、ホッとしたような、残念なような。
・「めちゃホリ」(菅谷)。よく頑張りました!
・「ハレーションサマー」(キャプ・嗣永・茉麻)。今回唯一、「いびつなベリーズ」を感じさせた曲。CD聴いた時点ではなんでこの三人なんだろう、夏焼とか入れた方が良かったんじゃ、なんて思ってたんですが、見て納得。「変!」「なんで?」を感じさせるメンバーだからこそ、オリジナルのイメージに近い「味」が出る。♂の慧眼。あるいはキャプの代わりに千奈子が入ってたらフィリピーナな感じが出て面白かったのかも知れないけど、そうなると、キャプテンin三人祭というとんでもなく倒錯した光景を目撃する事になったわけで。これで良かったのかも知れない。
・「夏 Remember You」。楽しみにしていた曲なんだけど、大音量のオケに対抗するためか、声を張り上げる感じになってニュアンスが潰れてしまったのが残念。あと、この流れで聴く曲でもないと思う。来年の夏に期待。
・「かっちょええ!」。この振りで膝丈までのパンツ履かせるとはどういうことか!(机を叩きながら)
・「パッション E-CHA E-CHA」。ひとりだけハニパれてない熊井(笑)。
・「夏わかめ」。あああぁぁぁあああああぁぁあああ!ハイスコアでヲタを萌え殺した「寝転がって頬杖ついてニッコニコ」プレイがあぁ!体育座りになってるぅう!責任者出て来い!
・「蝉」。「夏 Remember You」に同じく。
・「夏 Remenber You」までのセットリストは完璧。が、その後の4曲は少し息切れを感じました。一品一品はおいしいんだけど、同じ味付けが続いて、もうちょっと変化が欲しい、そんな感じ。自分が息切れしてただけという説もありますが。
・「21時までのシンデレラ」「スッペシャルジェネレ〜ション」「なんちゅう恋をやってる YOU KNOW」。ここから夏というテーマを離れて、キラーチューンの連打。
「シンデレラ」の「(愛して、愛して、愛して)足りないの」のところで、夏焼の声量が増して以前より中低音が響くようになっていました。それは彼女の成長の証だから嬉しくもあるんだけど、あの不安定な、だからこそ切なく響く歌声も好きだったんで、ちょっと悲しくもあり。
・「ジリリキテル」。強いてこの日ベストパフォーマンスの一曲を選ぶならこれ。春ツアーでもこの曲が一番良かったんだけど、やっぱり素晴らしい。重力に抗うダンスが痛い曲調にぴったり。ビジョンに抜かれた嗣永の鋭角的な表情にゾクッとする。
・EC。夏焼の誕生日ってことで、雅コール。やりなれないもんで、ちょっと恥ずかしかった(笑)。夜の部では、スタッフの機転で客席のおめでとうボードが次々とビジョンに映し出され、より一層祝祭ムードが高まる。
最終公演だからか、あくまで「アンコール」で頑張ろうとしてたヲタが側にいたんだけど、衆寡敵せず、結局諦めて途中から「雅コール」に切り替えてて、ちょっと笑った。
・EC明けのMC。夜の部では、菅谷が涙ぐんで喋れなくなったり。
・最後は「マジ夏すぎる」に「ピリリといこう」で締め。菅谷に続いてキャプテンもちょっと涙ぐんでましたね。大盛り上がりのなか終演。